離乳食に関する情報は年々変化しており、多くの親御さんが離乳食を始める際に何から始めたらよいかわからず、混乱しているのではないでしょか?
母乳やミルクが主な栄養源となるため、WHOは生後6カ月を過ぎてから離乳食を開始することを推奨しています。
離乳食の進め方は、ご両親の自由であり、どれが正しいとか間違っているということはありません。もう既にやられている方は、「こういった方法もあるんだ」くらいの感覚で読んでいただければと思います。
ちなみに、離乳食の進め方として、「スプーンを用いた従来の離乳食」「Baby-led Weaning(以下、BLW)」の2つあります。
従来の離乳食では、親がスプーンを用いてピューレ状の食べ物を赤ちゃんに与える方法、
BLWでは、赤ちゃんが自分の手を使って固形の食べ物を自分で食べる方法のことです。
どちらか一方を選択し、それを継続するか、あるいは両方の要素を組み合わせるのが一般的だそうです。
ある人にとってうまくいくことが、別の人にとってもうまくいくとは限りません。子どもの性格など、考慮すべきことはたくさんあります。
今回は従来の離乳食とBLWの違いについてご紹介します。
それでは、いきましょう。
従来の離乳食について
従来のスプーンを用いた離乳食は、親がスプーンにのせた柔らかい食べ物、つぶした食べ物、ピューレ状の食べ物を赤ちゃんに与えることをいいます。このような食べ物は、おかゆ、野菜や果物のピューレなどであることが多いです。
この離乳食は、昔ながらの離乳食で、年配の方に親しまれてきた方法です。
厚生労働省の授乳・離乳の支援ガイドによると、以下の目安で離乳食を進めていくそうで、赤ちゃんのペースに合わせて焦らず無理なく進めましょう。
離乳食初期(生後5〜6か月)
1日1回を目安になめらかにすりつぶしたペースト状を与える。母乳や育児用ミルクは欲しがるだけあげます。
食べることに慣れ、飲み込みことを覚える時期です。
離乳食中期(生後7〜8か月)
1日2回を目安に舌でつぶせる硬さの食材を与える。母乳は欲しがるだけ、育児用ミルクは1日3回程度あげます。
歯が生え始め、豆腐の硬さ程度のものを舌と上あごでつぶせるようになる時期です。
離乳食後期(生後9〜11か月)
1日3回を目安に歯ぐきでつぶせる硬さ(食べ頃のバナナぐらい)のスティック状の野菜などを与える。母乳は欲しがるだけ、育児用ミルクは1日2回程度あげます。
食べ物を前歯で噛み切って歯ぐきでモグモグ食べるようになる時期です。
離乳食完了期(生後12〜18か月)
1日3回+補食1〜2回を目安に歯ぐきや歯でつぶせる硬さ(肉だんごぐらい)の食べ物を与える。母乳は欲しがるだけ、育児用ミルクは食欲や成長に応じてあげます。牛乳を加熱しないで飲めるように。
歯を使うようになり、かじったり噛んだりが上手になります。手づかみ食べが中心でスプーンやフォークも使いたくなる時期です。
各国の離乳食の進め方の目安と特徴について
ここで、各国ではどのように離乳食を進めているのか見てみましょう。
生後5〜6か月 | 生後7〜8か月 | 生後9〜11か月 | 生後12か月以降 | |
---|---|---|---|---|
イギリス | 1日1回 マッシュ フィンガーフード (柔らかく調理した野菜など) | 1日3食 肉・魚・シリアルなど 鉄が強化された食品 フィンガーフード | 1日3食 ビタミンDサプリ服用 (母乳で育てられた場合) | 1日3食 さまざまな食品 食事の合間に2回のスナック |
ニュージーランド | 鉄分、野菜、果物など ピューレ→マッシュ (親指と人差し指の間で つぶせる) | 7か月までに調理済みや 熱した柔らかいもの 8か月までにフィンガーフード | 自分でスプーン 家族と同じ種類の食品 (細かく刻む) |
このように各国の離乳食の進め方を比べると、日本における手づかみ食べと同じ考え方のフィンガーフードに関しては、日本では12か月以降に行われているが、海外ではその携帯が早い時期からの記載がありました。
また、後で説明しますBLWの考え方が離乳のガイドに含まれています。
イギリス: NHS(National Health Service), Start for life, 2019
ニュージーランド: Healthy Eating Guideline, 2021
BLWについて
イギリスで発祥、アメリカでも普及されている海外で人気のBLWは、生後6か月以上の赤ちゃんが離乳食を始めると同時にピューレやすりつぶした食べ物ではなく、手づかみで食べられる食べ物を与える方法です。
この方法は、赤ちゃんが手で持って食べることができる大きさの柔らかい食べ物を、手づかみで食べ、最初から自分で食べることを前提としているため、「赤ちゃん主導の離乳食」とも呼ばれています。(生後6か月以上で自力で食べられる赤ちゃんのみ有効です)
BLWでは、赤ちゃんはまず噛むことを覚え、それから飲み込むようになります。また、赤ちゃん自身が自分で食べたいものを選び、自分の口に入れる量をコントロールして、手づかみで口へと運びます。
親としては食べものを押し付けるのではなく、基本的には見守るだけです。
BLWについてよく言われること
ここでは、BLWについてよく言われること(メリット・デメリットも含めて)ご紹介いたします。
- 将来の肥満のリスクが低下する?
- 様々な食品に触れることができる
- 運動能力の発達を促す
- 窒息が起きやすい?
- 栄養価への偏りが出やすい?
下記で詳しく解説いたします。
将来の肥満のリスクが低下する?
赤ちゃんが自分で食べる量やペースをコントロールすることができる(=空腹と満腹の合図がわかる)ようになり、肥満のリスクが低下するのではという可能性があるそうです。
実際に体重に関して、BLWに比べて従来の離乳食の方が体重が重くなったという研究結果もあります。
(Baby-led complementary feeding)
肥満率の増加が著しい欧米諸国では、BLWで改善されないかどうか期待を込めて、注目されています。
様々な食品に触れることができる
BLWを取り入れるご家庭では、従来の離乳食よりも、より多くの食感や味を含む幅広い食べ物に触されることができると考えられています。より多くの種類の食べ物を摂取することは、食生活の質や健康状態の改善につながります。
運動能力の発達を促す
BLWをする赤ちゃんは、食べ物を指で挟み、口に運ぶ動作を繰り返します。これによって手と目の連携を学び、さらに指先の器用さを発達させ、そのような練習をする機会を多く得ることができます。
窒息が起きやすい?
BLWは従来の離乳食に比べて、食べ物を喉に詰まらせることが起きやすいのではないかという懸念があります。
BLWを始めてみようとしているご家庭にとっては最大の関心事ではないでしょうか。
2016年にニュージーランドにて、対象者206名(BLW 105名、従来 101名)で行われた研究によると、どちらも35%は1回窒息を経験しており、BLWを取り入れていても、従来の離乳方法だとしても、結果に差はなかったとのこと。
(A baby-led approach to eating solids and risk of choking)
また、2018年に行われたイギリスの研究では、対象者1151人に対し155名(13.6%)が窒息しそうになったが、BLWと従来の離乳食とで結果に差はなかったとのこと。
(frequency of choking between a baby-led weaning or traditional spoon-feeding approach)
日本人を対象とした研究ではないため、これらの結果をそのまま適用できるかとは言い難いですが、あくまでも参考値と考えてみてください。
万が一のことを考え、BLWに限らず従来の離乳食でも窒息のリスクはありますので、窒息した時の対処法は必ず勉強してください。
栄養価への偏りが出やすい?
BLWでは赤ちゃん自身が食べるものを決めるので、必要な栄養が取れなくなるのではという懸念があります。
BLWでは親が一方的に与えるのではなく、赤ちゃんの好みが優先されるため、離乳の初期では偏食が懸念され、実際に炭水化物を好むという結果も見られました。
また、2016年と2018年に行われた研究では、6か月〜8か月のBLWをする赤ちゃんは、従来の離乳食の赤ちゃんに比べ、鉄・亜鉛の摂取量が少なくなっていたという結果があります。
6か月から母乳育児をしている場合は時に、鉄や亜鉛の不足になってしまうので、従来の離乳食であろうとBLWあろうと鉄や亜鉛を含む離乳食を意識的にとる必要があります。
必要な栄養分に偏りが生まれる可能性があるとういうことは念頭において、意識的に鉄分や亜鉛を含んだメニューを与えることが重要です。
2016年の研究: How different are baby-led weaning and conventional complementary feeding?
2018年の研究: Baby-Led Weaning Does Not Result in Lower Zinc Intake or Status in Infants
まとめ
今回は、従来の離乳食とBLWについて、簡単な概要をまとめました。
離乳食は、親と赤ちゃんの両方にとって、楽しくてポジティブな経験であるべきです。ある家庭には合っていても、別の家庭には合わないことがあります。離乳食の進め方には正解がありません。
従来の離乳食とBLWのメリット・デメリットについて、私たちの経験も踏まえご紹介します!