もしかしたら小児科の先生から、そろそろ離乳食を始める時期だと言われたことはないでしょうか。
食材をなめらかにすりつぶしたピューレをスプーンに盛って、赤ちゃんが小さな口を開ける、そんなイメージがあるかもしれませんね。
しかし、多くの親御さんがピューレの形で離乳食を始めることを選択しますが、離乳食の開始にあたってますます人気が高まっている「Baby-led weaning(以下、BLW)」という方法も実はあります。ピューレを使わずに手や指を使って食べる離乳食です。
この方法では、月齢に合った手づかみ食べができる食べ物を与えることで、赤ちゃんが自分の口に入れるものや量をコントロールできるようにします。
今回は、やってみようかなと考えている方やBLWって何?という方に対して、BLWを検討する理由やBLWの方法について説明します。
それでは、いきましょう。
BLWって何?
イギリスで発祥、アメリカでも普及されている海外で人気のBLWは、生後6か月以上の赤ちゃんが離乳食を始めると同時にピューレやすりつぶした食べ物ではなく、手づかみで食べられる食べ物を与える方法です。
この方法は、赤ちゃんが手で持って食べることができる大きさの柔らかい食べ物を、手づかみで食べ、最初から自分で食べることを前提としているため、「赤ちゃん主導の離乳食」とも呼ばれています。(生後6か月以上で自力で食べられる赤ちゃんのみ有効です)
BLWでは、赤ちゃんはまず噛むことを覚え、それから飲み込むようになります。また、赤ちゃん自身が自分で食べたいものを選び、自分の口に入れる量をコントロールして、手づかみで口へと運びます。
親としては食べものを赤ちゃんに押し付けるのではなく、基本的にはただただ見守るだけです。
従来の離乳食の違い
従来のスプーンを用いた離乳食は、親がスプーンにのせた柔らかい食べ物、つぶした食べ物、ピューレ状の食べ物を赤ちゃんに与えることをいいます。このような食べ物は、おかゆ、野菜や果物のピューレなどであることが多いです。
この離乳食は、昔ながらの離乳食で、年配の方に親しまれてきた方法です。
離乳食の方法について、以下の記事では、月齢別離乳食の進め方について簡単に記載しております。離乳食は、赤ちゃんのペースに合わせて焦らず無理なく進めましょう。
BLWのメリット・デメリット
BLWについて、よく言われるメリット・デメリットを紹介します。
メリット
- 様々な食品に触れることができる
-
BLWを取り入れるご家庭では、従来の離乳食よりも、より多くの食感や味を含む幅広い食べ物に乳児を触されることができると考えられています。
- 将来の肥満のリスクが低下する?
-
赤ちゃんが自分で食べる量やペースをコントロールすることができる(=空腹と満腹の合図がわかる)ようになり、肥満のリスクが低下するのではという可能性があるそうです。
- 運動能力の発達を促す
-
BLWをする赤ちゃんは、食べ物を指で挟み、口に運ぶ動作を繰り返します。これによって手と目の連携を学び、さらに指先の器用さを発達させ、そのような練習をする機会を多く得ることができます。
デメリット
- 汚れやすい
-
赤ちゃんは食べ物を手でつかんで口に入れるので、いろんなところが汚れます。
- 栄養価への偏りが出やすい?
-
BLWでは赤ちゃん自身が食べるものを決めるので、必要な栄養が取れなくなるのではという懸念がありますが、従来の離乳食であろうとBLWあろうと、生後5か月を過ぎた赤ちゃんは鉄や亜鉛を含む離乳食を意識的にとる必要があります。
私たちは、従来の離乳食・BLWの両方を取り入れていますので、経験者からの目線で語ったメリット・デメリットは以下の記事で詳しく解説しています。
BLWの開始時期について
赤ちゃんが生後6カ月を過ぎてから、BLWを始めるのが望ましいとされています。ただし、月齢は考慮すべき要素のひとつにすぎません。また、赤ちゃんは以下のことができるようになっている必要があります。
- 支えがなく、または少ししか支えがない状態で座ることができる
- 首がすわっている
- 手を伸ばして物を掴み、簡単に口元へ持っていく
- 舌で食べ物を口から押し出さない
- 食べ物に興味を示すようになる(大人が食べるのを見る、食べ物を口にする、食べ物をつかむ)
離乳食の始める時期については、以下の記事をご参考ください。
BLWの始め方
生後6か月の赤ちゃんがすぐに固形の食べ物を食べられるかどうか、半信半疑かもしれませんが、赤ちゃんの食べっぷりにはきっと驚かされると思います。私たちも実際にBLWを取り入れてみて我が子にびっくりしました。
BLWで守るべきこと
- 授乳やミルクを続ける
-
赤ちゃんは最初の1年のほとんどを母乳やミルクを通して栄養を摂取しますので、続けましょう。
- 月齢に合った食べ物を準備する
-
最初のうちは、指でつぶせるほど柔らかいものや、赤ちゃんの歯茎で噛むことができるような食感にしましょう。生後6か月の赤ちゃんには握りやすいように棒状に食材をカットするなど、準備をしましょう。
- 一緒に食事をする
-
一緒に食事をすることで、赤ちゃんは大人がどのように食べ物を扱い、食べるのか学ぶことができます。赤ちゃんが大人が食べているものに興味を示し、赤ちゃんが食べられるものであれば、少し与えてあげましょう。
- さまざまな食材を提供する
-
味覚の発達を助け、偏食になりにくくするために、時間をかけてさまざまな種類の食べ物に触れさせましょう。
BLWで用意するもの
BLWでは、特別な器具を購入する必要はありませんが、あると便利なものがいくつかありますのでご紹介します。
- ハイチェア
-
フットレスがついた、直立するタイプのハイチェアを探しましょう。取り外し可能なトレイがあれば、赤ちゃんと一緒にテーブルで食事することもできます。
- ビブ
-
BLWを取り入れると、とても汚れます。大きめのビブを購入するか、適温であれば、オムツだけにしてあげましょう。
- スプーン
-
赤ちゃん専用のスプーンはとても便利です。
- なみなみカッター
-
滑りやすい食材を調理するときに、赤ちゃんが握りやすいようにカットするのに便利です。
- 蒸し器
-
野菜の下ごしらえに最適です。
私たちが愛用している上記で取り上げたアイテムたちをこちらの記事で紹介しています。
BLWを始める際に気をつけたいポイント
赤ちゃんに固形物を与えるとき、喉に詰まる心配をするのは当然です。私たちも始めたときは、喉に食べ物が詰まらないかとても見ていてハラハラしました。ただ、安全に調理された食べ物を与える限り、赤ちゃんの歯茎は柔らかい固形物を噛むことができます。
赤ちゃんが窒息しそうな兆候があるのかを知り、窒息とむせるの違いを理解することは重要です。特に、BLWの最初の数週間は、赤ちゃんが慣れない固形の食べ物を口に運ぼうとするため、むせたりすることがよくあります。しかし、「むせる」というのは、食べ物が口の奥に入り過ぎた時に起こる安全な反応であり、窒息とは違うことを覚えておいてください。
BLWの始め方について、もっと詳しく知りたいという方は、以下の記事で詳しく解説しています。
BLWで与える食べ物について
赤ちゃんには、いろいろな種類の食べ物を与えることが大切です。これは、赤ちゃんにさまざまな栄養素を与えるだけでなく、味や食感を経験させる機会にもなります。
鉄分やタンパク質が豊富で、栄養価の高い食べ物を与えたいですよね。また、赤ちゃんが持ちやすく、安全に食べれるように調理されていることも重要です。柔らかく、食べやすい大きさにカットされ、窒息の危険性がある食品でなければ、BLWのメニューになります。
代表的な食べ物
- スライスしたバナナ
- スライスしたイチゴ
- 蒸して皮を取り除いたりんご
- スライスしたアボカド
- 蒸したサツマイモやじゃがいも
- 蒸して千切りにしたニンジン
- トマトの薄切り
- 蒸したブロッコリー
- 固茹で卵
- 茹でた牛肉を細切りにしたもの
- 骨を取り除いた焼き魚
- 生又は軽く焼いた豆腐の細切り
- レギュラーまたはギリシャ風ヨーグルト
- リコッタチーズ
- モッツァレラチーズ
- チェダーチーズ
避けるべき食べ物/気をつけるべき食べ物
赤ちゃんに与えるのを絶対に避けるべき食べ物と、安全な方法で与えるために注意すべき食べ物がいくつかあります。
赤ちゃんに与えるのを避けた方がいい食品は以下の通りです。詳細はこちらから。
- 砂糖/砂糖入り食品
- 塩分の多い食品
- ハチミツ
- 乳製品
- 生の食品
- 水銀の多い魚
- 硬くて丸い食べ物
- 硬い食べ物
- 皮のある果物
- ナッツ類
- 粘着性のある食品
食物アレルギー
以前は、一般的な食物アレルギーの導入を遅らせることが推奨されていましたが、現在は、アレルギーとなる食べ物をできるだけ早く導入し、頻繁に与えることが推奨されています。
ただ、食物アレルギーを発症するリスクのある赤ちゃん(アレルギーの既往症がある場合や重度の湿疹がある場合)は、アレルギーを導入する前に医師に相談してください。
アレルギー食品の上位10品目 :
どのような食べ物に対してもアレルギーを引き起こす可能性はありますが、一般的なアレルギー食品は以下のものです。詳細はこちら。
- 鶏卵
- 牛乳
- 小麦
- ナッツ類(ピーナッツ、クルミ、カシューナッツなど)
- 果物
- 魚卵
- 甲殻類(エビ、かになど)
- そば
- 大豆
- 魚類
BLWを成功させるコツ
BLWを始めた最初は少し大変でも、継続していくうちにコツをつかめるはずです。ストレスなく、スムーズにスタートができるようにBLWを成功させるコツをぜひ覚えてください。
- スモールスタート
-
最初のうちは、ゆっくり少しずつ始めましょう。赤ちゃんの目の前に1つか2つの食べ物を置くだけで大丈夫。それ以上置くと選択肢の多さに赤ちゃんが圧倒されてしまうかも。
- 汚れを覚悟する
-
BLWの赤ちゃんは赤ちゃん自身も赤ちゃんの周りにある椅子やテーブル、床、至るところ汚れます。食べる時はオムツだけにしたり、ハイチェアの下に新聞紙を引くなどして、少しでも片付けしやすい環境に整えましょう。
- 必要なものは必要なタイミングで
-
もし、ご家庭にすでにハイチェアがあるのなら、わざわざお皿やボウルを用意する必要はありません。ハイチェアについているトレイやテーブルの上に置くだけでBLWを進められます。もちろん手づかみなのでスプーンもいらないかも。あれもこれもと準備をするとお金だけが最初にかかってしまいます。BLWに慣れてきたタイミングで、必要なものをゲットするようにしましょう。
- 赤ちゃんにとっては学びの時間
-
BLWでは、赤ちゃんがさまざまな食感を楽しんだり、味見をしたり、噛んだりする学び/遊びの時間だと捉えてください。いろいろな種類の食べ物に慣れ親しむことが大切です。
- 無理強いはしない
-
赤ちゃんにとっては学びの時間なので、最初の数カ月はほとんど食べなくても驚くことはありません。もちろん栄養は母乳やミルクから摂っているので大丈夫。赤ちゃんのペースに任せましょう。食べるのが上手になり、食べる量が増えるにつれて、母乳やミルクを徐々に減らし、大好きな離乳食に切り替えていきます。今まで毎日のように母乳やミルクを与えていたのがだんだんと少なくなってきます。今を大切に。
- 柔軟に対応しよう
-
離乳食の進め方はもちろん、育児に関してはどれが正解でどれが間違っているというのはありません。BLWの一部を取り入れたり、従来通りにスプーンを使って交互に行ったりすることもできます。赤ちゃんがバナナを食べたら、あなたがスプーンでヨーグルトを準備し、赤ちゃんに食べさせたり。
写真を撮るのを忘れずに。BLWを取り入れると食事がぐちゃぐちゃになります。手も顔も髪も何もかも。その一瞬の一枚はとても貴重なものになります。ぜひ写真を撮って思い出を作りましょう。